こんにちはボクシングブロガーのtorajiroです。
今回の記事は自己満足の要素が強いです。
2023年度東日本新人王トーナメント決勝を観戦して多くの感動をもらいました。
勝った選手はおめでとうの一言。
一方の敗れた選手達もベストなパフォーマンスを見せた選手、対策の跡が伺えた選手、正直運が悪かった選手とそれぞれに思うところがありました。
ということでこの記事ではトーナメントに敗れた選手達にスポットを当てて試合の感想を述べます。
北野武郎の殻を破ったミニマム級ファイナリスト杉浦義
2023年度東日本新人王ミニマム級の優勝候補一角だった大橋ジムの北野武郎選手。
綺麗なボクシング、上手いボクシングは見せるが攻めきれない部分が北野選手の課題でもありました。
北野選手に勝つのであれば駆け引き抜きにガンガン攻めまくって一気に巻き込むこと。
それが出来るボクサーは杉浦義選手しかいないと思っていましたが、想像以上の猛攻で杉浦選手は北野武郎を追い詰めました。
試合が始まるとオーソドックススタイルから右を振り、そのままサウスポーにスイッチして左を振り、スイッチしながら北野武郎選手に先制攻撃を仕掛けていった杉浦選手。

杉浦選手がお構いなしに攻めていったことで、これまで足を使った綺麗なボクシング主体だった北野選手が足を捨て、自ら距離を詰めて打ち合いに。
これまで綺麗なボクシングを見せてきた北野選手が自分から接近戦を仕掛け、杉浦選手を下がらせて打ち勝つ。
過去3戦では見たことのない北野選手がリング上に。
新たな北野選手の一面を見せたのは杉浦選手がそこまで追い詰めたから。
スイッチしながら激しい攻撃を仕掛けた杉浦選手。
当て感も素晴らしく、北野選手の顔面をあそこまで跳ね上げる選手はおそらく今後もそうは出てこないでしょう。
強いて言えばやや腰が丸まって下半身の力が拳に伝わっていない部分が今後の課題でしょうか。

肩がしっかり入った肩甲骨パンチは痛そうですが、あそこに更に腰が入って全身でパンチを打てるようになれば更に強打が活きてくるんじゃないかと感じました。
相性の悪さもでたLフライ級の早坂峻
アマ22戦のキャリアに裏打ちされた技術のある横浜光ジムの早坂峻選手。
テクニックはあるがパンチが軽い点が早坂選手の現時点での課題。
対するはこの階級で圧倒的な攻撃力を持った大橋ジムの磯金龍選手。
攻撃力はある一方でディフェンスに難があるのも磯金選手の特徴の一つ。
総合力で早坂選手の勝利を予想していましたが、この試合は攻撃力の差が大きく影響しました。

早坂選手は磯金選手の強打をしっかりブロックしつつコンパクトな右から攻めていましたが、パンチ音に圧倒的な差がありました。
ブロックの上からでも磯金選手の強打は目を惹く。
一方で早坂選手のコンパクトなパンチは当たっていたとしてもインパクトがない。

磯金選手の強打にコツコツ当てていく早坂選手のパンチが霞んでしまった1戦でした。
終盤は早坂選手が追い上げていたので、8Rだったら逆の結果になっていたか。
まだ19歳でパワーが付いてくるのはこれから!
フライ級の山田龍斗序盤の作戦は良かった
フライ級は6戦1勝の山田龍斗選手と7戦6勝の高熊龍之介選手の1戦。
戦績が示す通り実力差は明白と思っていましたが、1R目は山田選手が前後左右に動きながら高熊選手の攻撃を遮断。
山田選手は動き回りながら高熊選手が打ちに行く一歩先に先制攻撃を仕掛けてまた動く。

自分の距離に入る一歩手前から先制されて動かれると結構嫌なもの。
下手をするとペース取れずにズルズルと行ってしまう展開。
この展開を序盤だけでも作れた山田選手はお見事。
リーチのある高熊選手相手に左の差し合いでも結構先手を取れていたので、もっとこのリードが使えたら良かった。

数は少なかったですが左ボディも威力あったので接近した展開でもっと打てても良かったかも。
Sフライ級吉成亮人は回転力とバランスが課題?
無尽蔵のスタミナを持つ三迫ジムの佐藤祐選手と鉄壁のガードからのリターンが抜群のライオンズジムの吉成亮人選手によって争われた決勝。
個人的な予想はディフェンス能力の差で吉成選手の勝利と見ていましたが、佐藤選手が5R動き回って1ポイント差で支持を集めました。
中盤はブロックからのリターンで吉成選手がペースを取っているように見えましたが、終盤の4,5Rは佐藤選手が、接近戦からバックステップして空間を作りそこに有効打を当てていく。

終盤疲れの見えた吉成選手は佐藤選手の動きにバランスを崩してしまう。
佐藤選手はインサイドに体を傾けて、下から吉成選手の両ガードの間を突き上げるジャブも効果的。
接近戦の中での強打は吉成選手でしたが、回転力でも佐藤選手が上回っていました。

今後は足を使う相手への対応、下からのパンチへの対応、回転力アップが課題かなと感じました。
良い選手である事に変わりはありませんが。
バンタム級榊原祐弥はやや不運な決着も左ストレートがもっと伸びれば
東日本バンタム級の決勝に出場した横浜光ジムの榊原祐弥選手。
三浦良斗選手の先制攻撃をくらい、1RでKO負けしましたが、映像を見返すとかなりの力で右と同時に頭が当たっている。
右は距離が近かったので、深いダメージを与えていたのはおそらバッティングの方だったと思います。
ただ榊原選手本人がバッティングを訴えている訳ではなく、実力で負けたとコメントしているのでこの話はここまで。
試合は序盤から三浦選手の右をもらい榊原選手は劣勢ではありました。

得意の左からの右フックも空を切りそこからのダウンで良いところを出せず。
それでも潔いところが榊原選手から滲み出るボクシング愛。
河村慎司選手に敗れた時から比べるとフィジカルは強くなっていますが、まだ左ストレートが伸びないところが一番の課題でしょうか。
トーナメントはここで終わったので次に向けて左ストレートの伸びを意識した練習をしてみても良いのかなとファン目線では感じています。
あとこれは変則で長所でもあるかも知れませんが、右・左・右・左と足先で前後にリズムを取る動きも上体が浮く原因にもなるので良し悪しなのかなぁと。
とまぁこんな具合にお客さんが色々と言いたくなるような魅力が榊原選手からは滲み出ていますね。
この敗戦を糧にレベルアップして帰ってきてください!!
Sバンタム級の鳥井士恩の思い切りが仇に
思い切りの良い攻撃が売りの鳥井選手はその思い切りの良さが仇となり迎撃されてのTKO負け。
結果はとしては黒星が付きましたが、そこまでの戦い方が決して悪かったわけではなく、逆の結果になっていた可能性も十分に考えられる試合内容でした。
須藤選手の左の的中率は確かに高かったですが、鳥井選手が一気に距離を詰めて放つパンチもヒットしていました。

鳥井選手からあの積極性が無くなってしまうのは避けたいところですが、強いて言えば思い切り良く踏み込んだ後の連打をまとめている時のガードでしょうか。
自分から仕掛けていく際にある程度ガードが下がってしまうのは致し方ない事ですが、打ち合いの最中にもう少しディフェンスに意識があっても良いのかも。
フェザー級の山川健太は交通事故と割り切って
牧田健之介という突如として現れたアニヲタハードパンチャーの一撃に沈んだ山川健太選手。
圧倒的優勝候補だっただけあり、倒されるまでのポイントは山川選手が取っていました。

仕掛けるタイミングがちょっとだけ早かったか。
一年後に新人王に再チャレンジする道もありますが、山川選手の今後を考えると一歩上のレベルで戦ってボクシングの精度を高めていった方が良いかもしれない。
4回戦では相手がいないと思われ、成長のタイミングを逃してしまう恐れも。
Sフェザー級山内雄輔は見事なアッパー
決勝で2R2分22秒TKO負けとなった山内選手ですが、パンチの的中率では勝利した下村選手より上だったかも知れない。
アッパーで何度も下村選手の顔面を跳ね上げて見栄えも非常に良かった。

戦前予想通りの猪VSライオンの獣対決でした。
山内選手のボクシングは総合格闘家みたいだなと思っていたのですが、調べてみたら実際総合格闘技からボクシングに転向してきた選手のようでした。
まだ総合格闘技っぽさが抜けない中で決勝まで来たんですからポテンシャルはかなり高いはず。
もう一歩突っ込まない位置で戦えるようになれば真っ直ぐのパンチが活きてもっと倒せる選手になるはず。
潜在能力の開花が待たれるライト級の菊池音央

西畑選手の先制攻撃をくらい、終始クリンチホールドの多いボクシングになってしまった菊池選手。
しかし2R後半に見せた猛攻は躍動感があって将来性を感じました。
181cmの大きな体であれだけスピードがあって思い切りパンチを振れるボクサーは日本人では早々いない。
まだ20歳ですし、上手く鍛えれば化ける逸材だと再認識しました。
Sライト級大場翔は持ち味出すも見せ場作れず
川村英吉選手のジャブからの組み立てに見せ場を作れず2者がフルマークで敗北した大場翔選手。
結果は完敗ですが、大崩れする場面もありませんでした。

頭をしっかり振って前で避けて致命傷は回避。
時折り見せていたコンパクトな右からのコンビネーションは良かったと思います。
やや大振りになる場面がありましたが、1発で倒すタイプではない。
回転力もあるのでもっと振り回さずコンパクトなパンチでコツコツ攻めていった方が相手からしたら嫌だなと個人的には感じました。
ウェルター級加藤大河は身体的に成長過程
須賀大地選手の変則強打に見栄えで敗れた加藤大河選手。
会場で観戦していると須賀選手のビッグパンチの印象が強かったですが、加藤選手もクリーンヒットはもらっていなかった。

しっかりガードしてインサイド突いて有効打を当てていたのは加藤選手。
しかし須賀選手のパンチの迫力が目立った。
ボクシングのレベルで上回り、今後の伸び代を感じたのは加藤大河選手。
変な癖もなくパンチも真っ直ぐ綺麗でガードも良い。
まだ20歳なのでウェルター級の体が出来上がってくるのはこれから。
ここから体が出来上がって来たらランキング上位の選手達を脅かす存在になってくるでしょう。
ミドル級のマッチョパパ一基はマッチョボクシング脱却!!

デビューの頃はビッグパンチをブンブン振っていたマッチョパパ。
デビュー戦は赤井英五郎選手のドンピシャの右アッパーで倒されてTKO負け。
2戦目の盛合竜也選手との試合も左右大振りなパンチを振るが内側から有効打をもらい、前のめりになったところに右アッパーももらい完敗。
デビュー2戦目までは振り回していたマッチョパパですが、ここ数戦で成長を遂げ、東の決勝ではデビュー戦で土をつけられた英五郎選手相手にリベンジマッチ。
1R目は足を使ってサークリングしながら入ってくる英五郎選手を右フックで迎撃。

2R以降はより一層距離を詰めて来た英五郎選手に回転力で負ける場面が増えるが、右ボディストレートを見せつつ、時折右フックを顔面に叩き込んで最後まで一発逆転の可能性を見せました。
あのブンブン丸だったマッチョパパがこんなに足を使って柔らかい動きをするようになったのかと成長に感動しました。
ビルダーのマッチョな筋肉がどんどんとボクシング仕様に進化しているのを感じます。
分断されて固かった筋肉達が連動し、躍動している。
あの筋肉達が力を合わせ、もっともっとボクシングの動きに適応していく姿を見てみたい。
まだまだ来年の新人王トーナメントも目指して頑張っていただきたい選手です。
まとめ
最後に東の決勝で敗れた選手達の良かったところと今後の伸び代をまとめてこの記事を締めたいと思います。
- ミニマム級:杉浦義のスイッチしながらの猛攻は脅威。肩甲骨パンチにあともう少し腰が入れば。
- Lフライ級:早坂峻はディフェンス良し、コンパクトなパンチも良し、ここからのパワーアップに期待。
- フライ級:山田龍斗は作戦良く戦った。リードもボディも良かったのでもっと使っても良かった。
- Sフライ級:吉成亮人の鉄壁ガードからのリターンは鉄板。これに回転力、足を使う相手への対応が磨かれれば。
- バンタム級:榊原祐弥は運が悪かった。左ストレートはもっともっと伸びるはず!!
- Sバンタム級:鳥井士恩の飛び込みは最高。強いて言えば打ち合いの中のガードか。
- フェザー級:山川健太は4回戦では敵なし。今回のような事故を防ぐためにももっと上のレベルで精度を磨きたい。
- Sフェザー級:山内雄輔のアッパーはガンガン当たってた。突っ込み過ぎなければもっと倒せる選手になるのでは?
- ライト級:菊池音央2Rに見せたダイナミックな動きは将来性あり。もっともっと練習して才能を開花させて欲しい。
- Sライト級:大場翔は大崩れがない。コンパクトなパンチが良いので振り回さずにコツコツ攻めていければ。
- ウェルター級:加藤大河のボクシング技術は高い。体が仕上がってくればランカーを脅かす存在になる。
- ミドル級:マッチョパパ技術が格段にアップ。もっとあの筋肉がボクシング仕様になるところを見たい。
ちなみに今回の東日本決勝、僕の勝敗予想は8勝4敗でした。
当たった試合も外れた試合もどちらが勝ってもおかしくない接戦が多く、さすがは決勝の舞台まで上がってきた選手同士の戦いでした。