ボクシングにおけるリング禍を受けた安全面再考の議論の中で、何故ボクシングの事故ばかりが特別視されるのかという意見を多数目にしました。
- ボクシング以外にも危険なスポーツはたくさんある!
- 他のスポーツでも死亡事故が起きているのになぜボクシングだけ取り上げられるのか??
といった主張がファンのみならずボクシングに携わる方々からも聞こえてきました。
確かに学校での体育活動においても事故は起きています。
ボクシング以上に死亡事故の多いスポーツもあります。
ではなぜボクシングだけ槍玉に上がるのか(格闘技全般含む)?
本記事では他のスポーツにおいても死亡事故が起きている実態を紹介した上で、それでも何故ボクシングにおける死亡事故が他のスポーツにおけるそれと異なるのかを紹介します。
「今更そこ?」と感じる方も多いかと思いますが、意外なほどにこの点に対する疑問を目にしたので記事にしました。
学校体育においてもっとも事故が多いのは陸上競技・部活は自転車
ボクシングにおける死亡事故に関する議論の中で、他にも危険なスポーツは沢山あるという主張を多数目にしました。
- 柔道
- レスリング
- ラグビー
- F1
- 登山
どれも怪我や死亡のリスクは高いスポーツです。
では学校体育や部活において事故が多い競技は何かというと、
- 体育では陸上競技が1位
- 部活では自転車が1位
出典:学校における体育活動中の事故防止についてより
部活動における死亡・重度の障害事故の2位はボクシング。
なのでボクシングも危険なスポーツではありますが、事故の発生頻度で見れば上がいるということにはなります。
登山で亡くなる方は年間300人前後
次に遭難のニュースを頻繁に目にする登山ですが、こちらは毎年300名前後の方が亡くなっているのが現状です。
毎年300名というのは想像以上でした。
命を賭けてまで山に登りたいと思う心境は理解出来ませんが、
命を賭けて殴り合う方がもっと理解出来ないと言われちゃいますよね(汗)
なぜボクシングだけ?に対する世界医師会の声明
このように事故だけで見ればボクシング以上に多くの方が亡くなっているスポーツは他にもあります。
では何故ボクシングにおける死亡事故は別物なのか?
世界各国の医師会が加盟する非政府組織である世界医師会(WMA)はボクシングに対する声明を以下のように発表しています。
- Boxing is a dangerous sport.
Unlike other sports, its basic intent is to produce bodily harm by specifically targeting the head.
出典:WMA STATEMENT ON BOXING
声明の冒頭で
「ボクシングは危険なスポーツである。」
と宣言し、
他のスポーツと違い、その競技の目的が「頭部を中心に相手の肉体にダメージを与えること」である点が問題視されています。
- 自転車はレースで速さを競うことが目的。
- 登山は目標とする山を登ることが目的。
ボクシングは相手の頭部中心に、自分が受けた以上のダメージを与えて勝利することが目的。
こうして「競技の目的が何か?」という点に着目して比較すると、確かにボクシングを始めとする格闘技の目的は”問題あり”と言われてしまっても止むを得ないでしょう。
世界医師会(WMA)はボクシングの他にMMAやキックも含めた格闘技は禁止すべきであると訴えています。
ボクシングを始めとした格闘技が大好きな自分としては、
競技存続のためにもこの世界医師会の声明は無視できないと考えています。
まとめ
事故の発生数や割合だけで見ればボクシンング以上に危険なスポーツは存在します。
ただ、他のスポーツの目的は、
- タイムを競ったり
- 目標をクリアすることであったり
決して事故を起こすことを目的とはしていません。
一方、ボクシングを始めとする格闘技の目的は相手の体、特に頭部にダメージを与えること。
頭部へのダメージはその延長線上には「死」が繋がってきます。
競技の目的が相手を死に至らしめる結果に繋がる以上は、医師会の立場では肯定は出来ないでしょう。
古代ローマの剣闘士はキリスト教の反対で廃止されたと言われています。
現代における格闘技も世論の支持を得られなくなったら、
廃止に向けた圧力が強まり、競技離れが進んでいくでしょう。
事故が起きる度に再発防止に向けた策を検討し、実践し続けない限り格闘技の存続は有り得ません。
近年はリング禍のみでなく、減量中に亡くなるケースも見られます。
より一層格闘技のルール見直しの必要性が高まっていると言えるでしょう。
あわせて読みたい