本記事ではこれまで調べた各種のボクシング関連データから見えてくる現代社会の問題点・特徴を紹介します。
プロボクサー数の推移や競技人口、世界戦のチケット価格等、時に調べたデータから現代の日本社会の問題点や特徴が見えてくることがあります。
これまで漠然と受け止めてきた社会の変化を、ボクシングというフィルターを通すことでより一層身近に感じられるかもしれません。
プロボクサー数の推移とボクサー定年制度改正から見える少子高齢化問題
日本のプロボクサー数は直近で見ると増加傾向にあります。
- 井上尚弥選手ら注目選手の活躍
- 武居由樹選手、那須川天心選手らのボクシング転向
- 3150FIGHTら新たなプラットフォームの誕生
- 配信媒体の増加
こうした明るいニュースが選手の増加に大きな影響をもたらしていると推察されますが、15年スパンで見てみると実はプロボクサー数は大幅に減少していることが分かります。
- 2006年度 3,500名
- 2020年度 1,417名
- 2023年度 2,178名
このとおり直近で見れば増加傾向のプロボクサー数も長い目で見れば減少しています。
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他の格闘技へ流出している側面は大きいですが、それ以上に影響を与えているのが少子高齢化の人口減社会。
出生数ベースで辿っていくと、そもそもの競技可能な人口が劇的に減っていることがハッキリと見てとれます。
30年スパンで見ていくと競技可能な人口は35%も減ることが確実です。
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どれだけボクシング人気が復活しても、競技可能な人口がこれだけ減っていてはプロボクサー数を維持することは困難。
そうした中、JBCはボクサーの37歳定年制度を改正し、37歳を過ぎた選手でもプロとしてリングに上がれる環境を作りました。
勿論、年を重ねても競技レベルを維持できる選手が増えたこと、安全面での改善が行われ続けてきた背景も大きいですが。
少子高齢化社会の中で、37歳を過ぎてデビューするボクサーも現れ、そうした選手がボクシング界に新たな風を吹き込んで業界を盛り上げています。
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世界戦チケット価格が平均月収に占める割合から分かる賃金上昇なきインフレ
個人的にボクシングに限らず、エンタメ業界のチケット価格は世間のインフレ幅以上に上昇している印象を持っていました。
そこで1952年の白井義男VSダド・マリノ戦まで遡りこれまでのビッグマッチにおけるチケット価格と、その当時の平均月収を調べました。
平均月収に占めるチケット価格の割合を調べていくと、最安値席のパーセンテージは大きく変わらないものの、高価格帯のチケット代が大幅に上がっていることが分かります。
最高価格と平均年収の比較は以下のとおり。
試合 | チケット最高価格 | 平均月収(平均年収/12で算出) |
白井VSマリノ | 3,600円 | 14,892円 |
辰吉VS薬師寺 | 100,000円 | 379,583円 |
井上VSネリ | 220,000円 | 385,000円 |
井上尚弥選手の東京ドームチケットも最高価格は22万円でした。
これは平均月収の約60%近い値段。
井上尚弥選手の試合のチケット最高価格は近年22万円をキープしており、村田VSゴロフキンの1戦も同じく最高価格は22万円でした。
過去のビッグマッチは辰吉VS薬師寺戦で平均月収に占める割合は26%、白井VSマリノ戦は24%でした。
インフレが進む中、賃金が上がらず所得格差も広がる現代。
多くのお客さんに観戦に来てもらいつつ、収益を最大化しようと思えば低価格帯は添えおき、高所得者層から多くのお金を取るしか方法はありません。
ボクシング業界も今後更に富裕層向けのビジネスが浸透していくことになるでしょう。
THE MATCH2022の時に見られた300万円席みたいなウルトラVIP席も販売せざるを得ない時か来るのでしょうか。
ボクシングが反映していくためには、
そして我々庶民でも手の届く価格でチケットを買い続けるには、
富裕層向けのビジネスは欠かせません。
時折こうした高価格帯のチケットを否定する声もありますが、これがあるから我々はビッグマッチを現地で拝むことが出来るわけです。
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かませ犬ボクサーの歴史と円安の関係性
有望な選手に経験を積ませながら勝ち癖を作る上で重要な役割を担ってきたのがフィリピン、タイからの所謂かませ犬ボクサー達。
タイ人招聘ボクサーの試合は多い年だと年間280試合もありました。
その頃と比べると外国人ボクサーが日本のリングに上がる機会はかなり減りました。
日本の経済力も円の力もどんどんと低下しており、かませ犬を呼ぶコストも年々上昇しております。
この辺りは正確な数値では算出出来ていませんが、海外からかませ犬を読んでくるコストよりも国内でそうした選手を用意する方がコストはかからないでしょう。
叩き上げボクサー、地方ジムボクサー、定年延長ボクサー、そうした選手が大手ジムに所属する有望選手のかませ犬としてリングに上がる機会は益々増えていくはずです。
噛みつく場面に期待しています!!
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働き方改革の恩恵がもたらす競技人口の増加とサラリーマンボクサー達の活躍
ネガティブな要素ばかりを取り上げましたが、明るい話題も最後に紹介。
プロボクサー数は中長期でみると減少傾向にあることを紹介しましたが、ボクシングの競技人口でみると必ずしも減っていない、むしろ増加しているということを以下の記事で紹介しました。
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加盟料の高いプロボクシング協会には加盟せずにジムをオープンするケースは大分増えました。
ジムが増えても成り立っているということはそれだけ競技に触れる人が増えているということ。
一般会員が増えている要因の一つとして、働き方改革の恩恵でジムに通える時間が確保出来るようになっているという点はあると思います。
プロボクサーで見ても僕が現役でボクシングをやっていた頃には殆ど見られなかったサラリーマンボクサーを頻繁に目にします。
ポリスボクサーや消防士ボクサー、看護師ボクサー、医師ボクサーにお坊さんボクサーも!?等々と様々なフィールドで本職を持つプロボクサーも増えています。
長時間残務が当たり前だった時代から、こうして働きながら夢を追うことが出来る時代が来ているのは喜ばしいことではないでしょうか。
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まとめ:社会の変化を受け止めつつボクシング界の発展を願う
- 少子高齢化
- 賃金上昇なきインフレ
- 日本経済の低迷
この三つの要因を顕著に受けながら、その中でも変化に対応しながら成長を続けている日本ボクシング界。
この先も日本経済の更なる低迷と円安が続くのであれば選手達も海外を戦場にしていかなければいけません。
こうした変化の中、公平な環境で戦える海外の環境を用意すべく、TBプロモーションのような新たなプロモーションも立ち上がって環境構築に動いています。
新たな取り組みは想定どおりに行かないことも多々あり、見慣れる光景や思わぬ結果に怒り出すファンやそれに便乗してただ誰かを叩きたいだけのアンチが群がることもあります。
3150FIGHTやTBプロモーションといった新たな取り組みはとにかく叩かれ易い状況に置かれていますが、これらのプロモーションの成功の先に日本ボクシング界の明るい未来が待っています。
経済的には暗い話題が続きますが、日本経済もそろそろ浮上の時。
こうした新しいプロモーションの存在が日本ボクシング界の浮上、そして日本の経済浮上のキーになってくると信じています。
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