こんにちはtorajiroです。
以前過去15年のプロボクサー数の推移を調べたところ、大幅に選手が減っている事がはっきりと分かりました。
>>プロボクサー数調査 過去15年の日本人選手の減少数に驚愕!!
この数字を見て「ボクシングはオワコンなのか、、」とも思いましたが一方で、昔は一般的ではなかったボクササイズ(ボクササイズのネーミングは商標登録されているのでご注意を。)も今は人気エクササイズの一つ。
他にも暗闇ボクシングなんかも出てきてフィットネスとしてのボクシングはメジャー化しており、ボクシング人口自体は減っていないのではないかという気もしております。
今回はボクシングジムの数や指導者数の推移から、ボクシング人口が減ったのか増えたのか調査してみることにしました。
調査に使用した指標とその理由
今回調査に使用したのは日本ボクシングコミッション(JBC)の事業報告書になります。
JBCのウェブサイト上で公開されている2006年度から2020年度までの事業報告書から、クラブオーナーライセンス発行者数とトレーナーライセンス発行者数を調べ、グラフにまとめてみました。
なぜこの2つの数字を調べたかと言うと、
一つの仮説として、

プロボクサーが減っていても、その分一般会員がたくさんいればジムは存続できるし、トレーナーも必要になる。この2つの数字が減っていなければジムを存続していけるだけの一般会員がいることの証左となる。
と考えたからです。
ボクシングジムの数は、クラブオーナー(ジムの会長)のライセンス発行者数で代用しました。
クラブオーナー数とトレーナー数の過去15年の推移
それでは早速調査した結果を発表します。

このデータから分かる通り、クラブオーナー数は2006年度から大きく変動はありません。
なお、2020年度のクラブオーナーライセンス発行数は265ですが、現在確認可能な全国のボクシングジム一覧でカウントすると280のボクシングジムが存在しておりました。
この通りジムの数に大きな変動がないということは、少なくとも一定の経営状態は保持出来ているということになります。
ただ、ジムの中には閉鎖はしていないものの規模を縮小してかろうじで存続させている可能性もあるので、同時にトレーナー人数の推移も見る必要があります。
トレーナー数の推移を調べたところ、コロナ禍の2020年度には激減してしまいましたが、2018年度までは横ばい(やや微増)くらいをキープしておりました。
以下のプロボクサー数の推移と比較しても、プロボクサー数が減少している時点においてもトレーナーの数は増えていた事がわかります。

プロボクサーは減ったがボクシング人口は減っていない!
統計を取った結果、
- 少なくともコロナ禍以前まではプロボクサー数は減少する一方で、
- ジムの数は減らず、
- トレーナーの人数も減っていなかった(むしろ微増)
ことが分かりました。
プロボクサー数の減少と同じようにジムの会員が減っていれば、
まずはトレーナー数を減らしていくでしょうし、
それでも厳しくなったらジムを閉鎖せざるを得ない状況になるでしょう。
が、データによるとむしろトレーナー数は2018年度までは増加傾向にありました。
プロボクサーが減ってもトレーナー数を増やしていたということは、一般会員が増えていたということでしょう。

ボクシング人口自体は減っていなかった!
ということがこのデータから読み取ることが出来ました。
プロ協会未加盟のフィットネスボクシングジムが急増中
今回の統計はプロボクシング協会加盟ジムに限った結果ですが、近年は引退した元ボクサーがフィットネスボクシングジムを立ち上げる事例が増えております。
非常に喜ばしい事ですね。
- プロ協会加盟ジムの数もトレーナー数も減っていない(コロナ禍前まで)。
- 更にプロ協会には未加盟のフィットネスボクシングジムが増えている。
ということはそれだけボクシングに接する人口が増えているということでしょう。
プロボクサーが多かった2006年度当時は殆どなかったであろうこのフィットネスボクシングジムの会員もカウントすると、おそらくボクシングに接する人口自体は大幅に増えているのではないでしょうか。
プロボクシング協会の加盟料を考え直すべき?
前項でフィットネススタイルのボクシングジムが増えていることを紹介しました。
この主要因はボクササイズ(商標権に注意)がメジャー化したことによることは間違いないでしょうが、もう一つの側面としてプロボクシング協会の加盟料問題もあるのではないかと考えております。
プロボクサーを育成するためには、ボクシングジムは加盟料を払ってプロボクシング協会に加入しなくてはいけません。
この加盟料が非常に高く、なんと1,000万円もかかるのです。
ちなみにこの加盟料はオーナーが元チャンピオンの場合には以下の減額が適用されます。
- 世界王者=300万円
- OPBF王者=400万円
- 日本王者=500万円
チャンピオンなら減額というルールがあることから察するに、この加盟料はいわゆる信用料でしょう。
- 何処の馬の骨とも知らない奴がボクシングジムを運営してトラブル起こしたらボクシング界の信用問題になりかねない。
- 元チャンピオンはボクシング界とも関係が深くてある程度信用がおけるから良いけれど、そうでなければ1,000万円払えるくらい安定した資金がないとダメ!!
ということなのでしょう。
この考え方も確かに一理ありますが、
- 高い加盟料を払わなくてもフィットネスボクシングジムとして経営していける今
- プロボクサーが減り続けている今
参入障壁を高くし続けることについては再考の必要があるのではないでしょうか。
加盟料については以前から問題提起されておりますが、ボクシングライターで大学教授の粂川麻里生氏の以下の記事が非常に分かりやすく的を得ているので参考になります。
粂川氏の問題提起がなされてから20年近く経った今、日本のプロボクシング業界は危機に瀕している状態です。
このまま高い加盟料が課される状態が続くと、経営的な判断からプロボクサーの育成よりもボクササイズ主体で運営していくジムが増えていくのではないでしょうか。
まとめ+加盟料問題の解決策
プロボクサーが減っていることは元ボクサーのボクシングファンとしては残念なことですが、一方でボクシング人口自体は増えているという点は明るい兆しではないでしょうか。
ボクシング人口が増えれば元ボクサーも指導者としての働き口が増えますし、ボクササイズも含めたボクシングジムの経営者となれる可能性も広がります。
競技人口の増加はアスリートのセカンドキャリア問題を解消する一助となるでしょう。
この増えた競技人口をどうプロボクシングの世界に還元させていくか。
ここはJBCと日本プロボクシング協会の腕の見せ所でしょう。
このまま加盟ジムと未加盟ジムとで切り分けて鎖国を続けるのは得策ではないはずです。
例えば日本プロボクシング協会主催でジュニアチャンピオンズリーグ(JCL)やエアボクシング大会が開催されていますが、これらの参加資格は現在のところ日本プロボクシング協会の加盟ジムに所属する選手に限られます。
プロの育成は加盟ジムに限るとしても、何か提携ジム?協賛ジム?みたいな名目でプロ協会に加盟していないジムでも年会費?大会参加費?を払ったジムは上記の大会への参加を認めてみてはいかがでしょうか。
更にここで収めた額が一定程度貯まればプロ加盟も認めて良いと思います。
プロ加盟料を一括払いではなく分割払いでも認めるような発想です。
そうして将来のプロ協会加盟予備軍的なジムを増やしていったり、一般会員向けのマスボクシングみたいな大会を開催し、プロボクサー以外の、ボクシングをスポーツとして楽しんでいる方々へアプローチしていく事が、いずれプロボクシングの世界にも還元されていくと、torajiro的には考えました。
<関連記事>
>>プロボクサー数調査 過去15年の日本人選手の減少数に驚愕!!
>>プロボクサー数の減少に占める人口減の影響から見た15年後の選手数予測