こんにちはtorajiroです。
先日プロボクサーがこの10数年でどれくらい減少したのか調べた際に、前々から問題視されている一般財団法人日本ボクシングコミッション(以下、JBC)の財務問題についても調べてみました。
財務諸表の見方に疎いので大枠でしか分かりませんが、関連サイトの情報を参考にしたり興行数の推移からJBCによる管理体制の存続可能性を検討してみました。
先に僕の結論を申し上げると、近いうちにJBCによる管理体制は崩壊せざるを得ないだろうという結論です。
JBCの正味財産の推移
初めにJBCの2007年度からの正味財産(貸借対照表の資産の額から負債の額を差し引いた法人の純資産)の推移を示します。
数字が見づらくて申し訳ないのですが、2008年度に一気に増えた後、微減程度で横ばいだったものが2014年度からジェットコースターのように減っていき、コロナ禍が止めをさして2020年度にとうとうマイナスに転落してしまいました。
2,500万以上の赤字を出しています。
一般財団法人は2年連続で純資産学が300万を下回ると解散しないといけないのですが、この点JBCは大丈夫なのでしょうか??
わずか7年足らずの間に一体何があったのかをこの後説明していきます。
2008年度に正味財産が増えた理由
減少の原因をたどる前に、上のグラフをみて2008年度に何故一気に正味財産が増えたのか気になるところかと思います。
ここで一度財産が増えたのは、健保金を文科省の指導により収入として扱うようになったためです。
健保金(健康管理見舞金)とは、JBCが選手のファイトマネーから3%徴収して積み立てていたお金で、選手が負傷した際にここから見舞金が充当されるという制度でした。
(確か計量の時に袋にお金入れてその場で渡していたような記憶があります。)
上の赤線を引いた項目が健保金で、この時に5400万円が正味財産に加えられたため、見た目上は財産が増えましたが、本来の使徒は選手が負傷した際の見舞金であって、リングに上がる選手達から徴収してきたものでした。
JBCの財務悪化をもたらした2つの裁判
ではここから何故こんな短期間でJBCの財務状況が悪化したのか、その原因を辿りたいと思います。
まず一番に思い当たるのは、JBCがいずれも敗訴した2つの裁判です。
安河内氏らをめぐる不当解雇問題
詳細は割愛しますが、2012年6月にJBCが本部事務局長を務めていた安河内氏らを懲戒解雇処分し、そこから泥沼の4年に及ぶ裁判がスタート。
最終的に安河内氏側の主張が認められ、安河内氏は2017年に復職しましたが、その間毎月裁判費用が発生していたことになります。
また、この時JBC側は慰謝料と未払い分の給与として約2600万円を支払っています。
当時の問題については以下の記事が参考になります。
▶︎日本ボクシング界にいま、「重大な危機」が迫っている!~統轄団体・JBCのずさんな運営・資金管理を告発する
亀田裁判での敗訴
亀田兄弟との訴訟でJBCが敗訴して4,500万円の支払いを命じられていることは周知の事実ですが、この裁判が始まったのは2016年。
安河内裁判が終わるかどうかというところでまた新たな裁判がスタートしたことで、引き続き毎月の裁判費用が発生することと。
しかもまた敗訴し、賠償額は4,500万円※。
この支払いをした結果が今の正味財産なのか、この状況からこれから支払わないといけないのか、僕の知識では分からなかったです。
以下の財務諸表を見てわかる方がいたら教えていただきたいです。。
▶︎JBC令和2年 財務諸表
※東京高裁はJBC側の控訴を棄却、亀田側の控訴に基づき、賠償額を一審の4450万円から1億10万円に変更する判決を出しました。これによってJBCの存続は更に危うくなってきました。
▶︎東京高裁、JBCに1億円超支払い命じる…亀田裁判、賠償額が大幅増額
JBCに健保金不正流用疑惑が浮上
こうした裁判が続いている中、JBCに先に紹介した健保金の不正流用疑惑が浮上します。
この健保金が裁判費用に充てられていたというのです。
少なくとも1億以上あった健保金が(紆余曲折を経て)4千万円になっていたという問題で、最終的には良くわからないまんま収束してしまいました。
我々のなけなしのお金が裁判に使われていたとしたら言語道断!!
ということで自分でも財務諸表を見ながら計算してみました。
現在は徴収されていないこの健保金ですが、2008年度の財務諸表で正味財産に加えられた額と、そこからの健康管理収入から管理費を差し引いた額の合計を出してみたところ以下の結果になりました。
んー確かに1億以上になっているはずなんだけど、どこに行っちゃったんでしょうねこのお金。。
プロボクサー・興行の減少による経常収支の赤字
そんなこんなで正味財産を減らしていったJBCですが、減っている中でもライセンス料や試合承認料等の事業収入が事業経費を上回っていれば、裁判を終えてまたコツコツと黒字化させていける可能性も残されています。
ですが現状の興行数はコロナ禍以前から減り続けて以下の状態に陥っています。
コロナ禍が完全に明けるまでにはもう少し時間がかかりそうなので、もう1年くらいは興行も少なくならざるを得ないし、コロナが明けても選手が少なければ元のように興行数を増やすのもすぐには難しいでしょう。
ライセンス料については先日の以下の記事で紹介した通り、プロボクサー数が減少しているのでライセンス料収入が増えることもないでしょう。
▶︎プロボクサー数調査 過去15年の日本人選手の減少数に驚愕!!
令和2年度の財務諸表で経常収支は2,800万円以上の赤字となっていたので、コツコツ黒字化していくどころか今のままでは続ければ続ける程赤字が膨らんでしまいます。
結論:JBCの存続は困難
JBCに泥沼裁判前の蓄えがあればコロナ禍を乗り切れたかもしれませんが、コロナ禍突入前に正味財産を吐き出してしまったのでこの状況を乗り切る体力が残されていません。
今の状況でやれることとしたら、
- ライセンス料、試合承認料の値上げ
- 人件費の抑制、経費削減
そんなところでしょうが、試合枯れしてる状況でライセンス料を値上げしたらもっと選手が引退してしまうでしょう。
試合承認料の値上げもジム側が絶対に許さないでしょう。
そもそもの原因を責任転嫁するなという話になってしまうので。
では人件費の抑制という話になりますが、現在JBCの管理体制が各方面で問題になっている状況です。
人件費を抑制したら管理体制は更に杜撰になってしまうのではないでしょうか。
井岡選手は杜撰なドーピング検査で被害を被りましたが、検査体制を充実させようとしたら経費削減どころか逆に経費は増えるでしょう。
令和2年度の財務諸表を見ても、コロナ対応なのか分かりませんが、委託費が前年度の380万から1,100万に大幅に増えていました。
経費削減は簡単には行かないでしょう。
以上、現状を分かる範囲で分析した上で、仮に自分がJBCの役員だったらと仮定し、現状をどう打開するか考えてみた結果、、、、僕なら白旗を挙げます。
転落の始まりは内紛による訴訟問題なので、そこに立ち返ると体制の刷新は不可欠に思います。
健保金問題から察するに資金管理もなあなあで知られたくないことが色々と眠っていそうです。
JBCのおかげで日本のボクシングが発展して続けてきた事は間違いありませんが、現状を知れば知るほど自力での再生は困難に思えました。
既に日本プロボクシング協会がJBCの存続リスクに備えて、試合管理を行う態勢作りの準備をすべく準備委員会を立ち上げることが発表されていますが、近いうちに何らかの具体的なアクションが起こされるのではないかと推察しております。
現状は厳しい状況ですが、JBCも協会も、選手もファンも、皆で一体となって現状認識をした上でボクシングをもっと良くしていきたいと思えば、まだまだここから盛り返していけると信じています。
大変な状況の中ボクシングを続けている現役選手の方々に深く感謝です。