こんにちはボクシングブロガーのtorajiroです。
2020年度のコロナ禍にボクシング界は選手が大量に引退し、一時危機的な状況になりました。
元々それ以前から年々選手が減っている状況でしたが、コロナ禍の大量引退でその点が顕在化される事となりました。
この記事では2006年〜2020年の”15年間で一体どれくらい日本のプロボクサーは減ったのか”をグラフで示した上で、コロナ禍を経てボクシング界が歩む復興への道のりを紹介します。
この記事で伝えたいポイント
- 2006年からの15年間でプロボクサーは激減。
- 減少傾向にコロナ禍が追い打ちをかけて危機的状況に。
- そこから井上尚弥選手らトップボクサーの活躍に3150FIGHTの盛り上がりでボクシング界は復興の道へ。
という流れの記事となっております。
過去15年の選手数調査結果
JBCの毎年度の事業報告書を元に作成した2006年度からのプロボクサー数推移が以下の表になります。
統計の中のボクサー数には、海外から招聘したボクサーの数も含まれています。
この表を見れば一目瞭然ですが、コロナ禍以前からボクサーの数は減少の一途を辿っており、2006年とコロナ禍前の2019年とで比較してもプロボクサー数は1,500人近く減っています。
単純計算で各階級において100人以上の選手が10数年で減った計算になります。
そして2020年にはコロナ禍により引退する選手が続出し、更に海外からも選手を呼べなかったことで、ボクサー数は2006年の3,500名から1,417名まで減ってしまいました。
(1,417名まで減った点についてですが、上図の通りコロナ禍で海外から招聘できなくなった分も含めての減少となりますのでご注意ください。海外から招聘出来なくなった200名以上の外国人ボクサーも含めての減少となります。)
この中には記念受験でプロになった選手や、ライセンスは更新したけれども試合をする意思のなかった選手も一定数いると考えると、実働しているボクサーはもっと少ない数字になります。
そしてこの1,417名の選手の多くが4回戦ボクサーです。
2020年度のA級ボクサーは387名。
10年前はA級ボクサーも700名以上いましたので半減しています。
この数字を単純に各階級に割ると各階級30名程度しかA級ボクサーがいなくなる計算に。
これまでの基準で見るとどう考えても選手数が少なすぎますね。
A級になると対戦相手の候補が30名程度しかいなくなるということになるので、必然的に同じレベルの選手同士での再戦が乱発しているの頷けます。
プロボクサーの減少理由
プロボクサー減少の理由は様々ですが、影響を与えていると考えられる理由を列挙します。
- 少子化の影響
- キックや総合への人材流出
- ボクシングの認知度低下
- 選手減少に伴う対戦相手の不在
競技人口の減少はボクシングに限らず、少子化に伴いサッカーや野球といったメジャースポーツも含めどんなスポーツにおいても減少傾向にあります。
人口減の影響がボクシングの競技人口にどれ程の影響を与えているかは以下の記事にまとめましたのでご参考ください↓
加えてキックボクシングが早くからキッズの育成に力を入れていたのに比べ、ボクシングジムはキッズの育成で出遅れました。
更に加えてK-1、RISEやRIZINを初めとした他の格闘技が軽量級にも力を入れ出し、ここでも人材流出が起きていると考えられます。
キックとボクシングで比較すると、閉鎖的で興行も地味なボクシングの世界よりも華やかで色んな試合に出場できる可能性のあるキックの方に魅力を感じるのは必然かもしれません。
ボクシングの認知度は15年前はガチンコファイトクラブの影響で若い子のボクシングへの関心も集まっていましたが、今はガチンコ的な盛り上がりはBreakingDownに持って行かれています。
ボクシング界はプロボクサー人口が減りながらも、海外から選手を呼んで何とか試合枯れしないようにやっていましたが、そこに追い討ちをかけるようにコロナ禍が。
興行は激減し、試合をやっても無観客や人数制限がかかり、チケット収入が無くなった選手達がこの時期に大量に引退しました。
夢だけでは生きていけないし、そもそも稼げなければ夢だった世界も夢では無くなってしまいます。
試合枯れによって日本ライトフライ級チャンピオンだった高橋悠斗選手がチャンピオンのまま引退した事が一時話題になりましたが、その高橋選手は現在キックの世界で頑張っています。
プロボクサー減少で生じる問題
プロボクサーが減少すると、以下のような問題が生じます。
- 対戦相手がいなくなる
- 同じ対戦相手との再戦が増える
- 興行の数が減って試合間隔が空く
- 試合数が少なくてチケット収入が得られない
その結果ボクサーはボクシングという競技で収入を得られなくなり、引退を余儀なくされます。
この悪循環に陥って選手が激減したのが2020年のコロナ禍の日本ボクシング界でした。
選手が少なくなった事で目玉カードが決まりやすくなった側面はありましたが、それはそれで選手にとってはハードでしたし、多様な選手がいないと盛り上がりに欠ける感じはしました。
コロナ禍ピークも過ぎてボクシング再興の道へ
コロナ禍に危機的になった日本ボクシングも徐々に持ち直し、興行も増え、井上尚弥選手ら看板選手の活躍に新たな興行の立ち上げで再び盛り上がりを見せています。
また、プロボクサーは15年の間に大幅に減りましたが、プロに限らない競技人口で見たらむしろ増えているのではないかと思えるデータも出てきました。
コロナ禍のピークを過ぎてプロボクサーが再び増加中
2020年度は試合が殆どなくなり、選手にとっては悲惨な年でしたが、2021年度になって再び選手は増え始めました。
2021年度のJBC事業報告書によるとプロボクサー数は1,718名まで増加。
但しA級、B級ボクサーは引き続き微減。
そして2022年度の事業報告書でもプロボクサー数は増加。
更にプロテスト受験者も過去10年で見ても最高水準とプチブームが起きているような状況に。
井上尚弥選手ら看板選手の活躍
2022年度には井上尚弥選手がバンタム級史上初の4団体統一チャンピオンとなりました。
そして2023年にはSバンタム級でいきなりラスボスのスティーブ・フルトン選手を破って2団体統一王者に。
2022年、2023年と他にも年に一つでも実現できれば大満足と言って良いようなビッグマッチの数々が実現されています。
- ミドル級の村田諒太選手も敗れはしましたがゲンナジー・ゴロフキン選手との統一戦を実現。
- 寺地拳四朗選手と京口紘人選手は日本人同士の統一戦。
- 井岡一翔選手も2022年の大晦日に引き分けとはなりましたがジョシュア・フランコ選手との統一戦。
こうした国内看板選手の活躍により、世間的な知名度は確実に上がってきている中、那須川天心選手がついにボクシングに本格転向。
2023年4月8日に日本ランカーの強敵与那覇勇気選手を相手に完璧な内容でデビューしました。
3150FIGHTがボクシング人気復活、プロボクサー増加の切り札に?
コロナ禍でボクシング界が危機に陥っている中、元三階級王者の亀田興毅氏が立ち上がり、紆余曲折を経て3150FIGHTというボクシング興行のプラットフォームを構築しました。
当初はコロナ禍の影響をモロに受けて無観客試合となったり、試合が延期になったりと厳しい船出でしたが、徐々に認知度を高め、3150FIGHT vol.3では皇治選手のエキシビジョンをキラーコンテンツにしてボクシングファン以外にもその存在が認知されるような大きな興行へと発展。
3150FIGHTでは初期の頃にもTKOの木下さんやゆたぼん君のエキシビジョンマッチを取り入れて話題を集めましたが、こうした手法には批判の声も多く聞こえました。
しかし話題性のある興行に出られる事は選手にとってはチケット売りの面でとても助かるもの。
昔の話ですが、僕もプロボクサーをやっていた時に、当時話題になっていたカツラボクサーが出る興行で試合をした時は面白がってチケットを買ってくれる人が結構いてチケット売りが楽でした。
3150FIGHTはこうしたエキシビジョンも含めたボクシングを広く認知してもらうための取り組みを取り入れながら、新規のファン獲得に尽力している唯一の興行ではないでしょうか。
3150FIGHTの歩みは以下の3150FIGHT記事一覧もご参考ください↓
働き方改革の恩恵?サラリーマン・副業ボクサーの増加!
一昔前はボクサーと言えばアルバイトで生計を立てながら競技活動を続けるイメージでした。
自分も大学卒業と同時に就職し、ボクシングは諦めないといけないと思っていました。
が、サラリーマンでも時間を捻出すればボクシングを続ける事は出来ます。
近年はサラリーマンボクサーや警察、医師、看護師、消防士、弁護士等々、絶対プロボクサーは無理に思えるような職種の方もプロボクサーになっています。
こうした選手の活躍がきっと今後プロボクサーの間口を広げてくれる事に繋がるでしょう。
ボクシングの競技人口は増えている!?
僕のブログでは色んなボクシング関係のデータも調べているのですが、一つ興味結果の出た調査がありました。
それがこちらの記事。
プロボクサーが減り続けた2006年から2020年のJBCのクラブオーナーライセンス発行者数とトレーナーライセンス発行者数を調べてみたデータになります。
この結果を見るとプロボクサーが減り続けていた時期においても少なくとも2018年まではプロ加盟ジムもトレーナーの数も減っていなかった事が分かりました。
更にデータはありませんが今はプロ未加盟のジムが次々誕生しているので、昔と比べてボクシングをライトに楽しむ層は間違いなく増えていると考えられます。
「オヤジファイト」や元日本ライト級チャンピオンの土屋修平氏が立ち上げた「だれバト」のようなアマチュア形式の試合は今後更に発展して行くでしょう。
こうしたアマチュア形式の試合でボクシングを楽しむ方が増えて競技人口が増えていけば、プロボクシングの人気・価値もきっと上がっていくと期待しています。
プロボクサーはこれ以上増えなくてもこうして競技人口が増えて応援する人が増えていけば、プロのリングに対するブランド力のようなものも高まり、より良い質のコンテンツが提供できるようになっていくはずです。
ABEMAでボクシング専門チャンネルが新設!!
こうしたボクシング再興の流れの中で、亀田興毅氏の尽力もあってなんとABEMAにボクシング専門チャンネルが新設されました。
これまでにも多くのボクシング興行がABEMAで配信されてきましたが、今後は更にABEMAでボクシングの興行が配信される機会は増えてくるでしょう。
配信される試合が増えた事でABEMAプレミアムに加入する恩恵も増えてきました。
フェニックスバトルもABEMAプレミアムに加入していれば追加料金なしで視聴出来ますし、過去の配信を見返す事も出来ます。
ペイパービューも20%オフで購入出来るので、他の格闘技も好きな自分にとってはABEMAプレミアムは欠かせない存在。
>>ABEMAのペイパービューで視聴可能な格闘技イベント一覧
まだペイパービューがボクシングにおいてどこまで浸透してくるかは未知数ですが、ABEMAプレミアム限定配信みたいな興行は今後出てくるだろうと予想しています。
オリジナルコンテンツ数No1!【ABEMAプレミアム】U-NEXTでWHO'S NEXT DYNAMIC GLOVEがスタート!!
ABEMAが3150FIGHTと組んでボクシングを盛り上げている中、U-NEXTも帝拳ジムと組んでダイナミックグローブの後継番組WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVEが配信される事に。
更に伊藤雅雪氏が手がけるTBプロモーションの興行もU-NEXTで配信。
U-NEXTでは国内ボクシングだけでなく海外の注目カードも配信されています。
ABEMAが新規顧客開拓に動く一方、U-NEXTはコアなファン層を意識した作りにはなっているからか、あまり積極的な広報をしていない印象ではありますが、こうしたコンテンツの充実はボクシングファンにとっては嬉しい限りです。
ネックとなるのは月額の2,189円ですが、1,200円分のポイントが毎月入り、そちらをPPVの購入や映画館でも使えるので実質価格は月1,000円程。
更に携帯をy.uモバイルのU-NEXTプランに変えてしまえばスマホ代でU-NEXTも視聴出来てしまいます。
まとめ
プロボクサーが減った減ったと聞いてはいましたが実際にどれくらい減ったのかは把握していなかったので、過去に遡って統計を調べた際は想像以上の減少曲線には驚きました。
昔は3ヶ月スパンくらいですぐに試合が決まりましたが、今は4回戦ボクサーですらそんな簡単には試合も決まらず、モチベーションを維持し続けるのが難しそうです。
特にB級、A級は選手減が続いているので更に苦労しているでしょう。
更にチケットの値段も随分と上がったので、選手はチケットの手売りにも苦労しているはずです。
>>チケットが高い!中止が多い!ボクシング興行の問題点を他の格闘技と比較
しかしそうした状況の中でも明るい兆しが、ボクシング再興の可能性が見えてきました。
ボクシング界の明るい兆し
- 井上尚弥選手ら看板選手の活躍、那須川天心選手のプロボクサー転向
- 3150FIGHTという注目興行の誕生
- 働き方改革の恩恵か?副業ボクサーも増えてボクサーの間口が拡大
- ボクササイズ人気の高まりで広い意味でのボクシングの競技人口はむしろ増えている可能性大
- ABEMAでボクシング専門チャンネルが新設
- U-NEXTもボクシングコンテンツを充実化
人口減少と時代の変化も考慮するとプロボクサー数自体を増やすことは簡単ではないと思いますが、こうした明るい話題に乗っかってボクシング人気が高まり、稼げる選手が一人でも多く増えてくれたら良いですね。
このブログでも引き続きボクシングが面白いと思えるような情報を発信していけるよう精進します。